2010年8月29日日曜日

白馬縦走 2 日目 雪倉岳 ~ 朝日小屋

予定を早め、朝 5 時に出発するため、暗い中で準備。おっさんがお湯を沸かしてきてくれたので、レトルトのぞうすい+味噌汁(別々にではなく、一緒くたに溶かしてひと思いに食す)で朝食。枕元に水を満たしたサーモスを置いて、目をさます都度ごくごく飲んだせいか、それともおっさんが持参した酸素スプレーのおかげなのか、高い山で決まって起こる頭痛や吐き気に悩まされることがなかった。

夜明けとともに出発。

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ふたたび白馬山頂を経由。

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私「あそこに見えるのは剱岳だよね?」

おっさん「あれはラピュタだよ」

マジデスカ。

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P8060603 ハシモトの発見した不思議な色模様の花。

P8060604 感動の涙を流すハシモトであった。

P8050539 色違いのリンドウも見つけたよ。

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IMG_1485 前日は一緒に歩いてくださった救助隊員さんに迷惑をかけられず、あまりゆっくり見る余裕がなかったけれど、三国峠付近の斜面の岩場は一面ピンク色に見えるほどコマクサが咲き乱れているのです。

IMG_1495 やっぱり素敵な山だ。

雪倉岳への分岐を越えたあたりで、 マツムシソウが出現。

IMG_1503環境が変わるごとに、咲いている花の種類も変わってゆく。

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目の前にそびえるこれが、雪倉岳だと思い込んでいたのさ (おっさんがそう言うものだから)。あれを越えるの~? と正直びびっていたら、クールな単独行のダンディが、「あれは鉢ヶ岳。ルートは迂回してるよ」と教えてくれたのでした。おっさん、2 年前に同じルートを通ったはずなのに忘れてる。

IMG_1510 おー、るりるり発見! 上高地で見た「エゾムラサキ」かと思いきや。あとで朝日小屋で上映されたビデオによると、「ミヤマムラサキ」なんだそう。通りすがりの登山者の方に聞かれて「エゾムラサキ、かなんかだと思います・・・」と嘘を教えてしまったよ・・・。

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雪倉岳の急登がはじまります。雪倉岳避難小屋のトイレに大渋滞が起きていました。しかし今回大汗をかいたので、どれだけがぶがぶ水を飲んでも一向にトイレに行きたくならなかったな。

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あまりのしんどさにへこみそうになるたびに、可憐な花々が目に入り、気持ちをすこし立て直す。その繰り返し。

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IMG_1537 雪倉岳を登りきって下りに入った頃に満を持して登場したのはウスユキソウ。エーデルワイス。初めて見ました。感動でした。

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P8060623 ダイモンジソウ。花びらが漢字の大に似て、5 枚あるうちの 2 枚がひょろりと長い。

途中、10 名前後の団体さんが人が行き来できないほど狭いルートの途上で溜まっていた。花を見て写真を撮ったり、植物の説明を受けたり、靴ひもを結びなおしたり。

昨日最終登山者になってしまったこともあり、停滞してしまうことに不安があったため、お願いして先に行かせていただいた。そのときに、団体さんたちに窮屈な思いをさせてしまったらしい。「そんなに急いでどうするんだ」「こんな狭いところで追い越しをかけるなんて」という旨の、咎めるような男性の声が背中に投げかけられ、ショックを受けた。歩くのが遅いからこそ、自分のペースを守りたかっただけなのだけれど。その後は、その団体さんたちからできるだけ距離をとるように黙々と急いで下った。

IMG_1542 キヌガサソウ

雪渓が現れたり、水場で冷たいおいしい水を補給したり、湿原を縦断する木道を歩いたり。

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湿原では植生保護のため、木道以外に入り込んではならないという注意書きの看板が立っている。そのため、立ち止まらずに歩き続けるしかなくて、お昼休憩をとるタイミングを完全に逸してしまった。結局、木道を抜けて最初に目についた座れそうな場所に陣取って、遅いお昼。白馬山荘で作ってもらったお弁当を広げる。

P8060626ばて気味でしたが、おいしくいただきました。

P8060628ニッコウキスゲ。写真を撮られていた方が、「尾瀬よりもきれいだよねぇ」という感想を漏らしておられました。1 つの山で、色々な山のいいところが全部味わえるのが白馬の魅力なんだとか。

この日の工程の最終段階というところで、「水平道」 という道に入ります。しかし、これ、水平とは名ばかりで、結構だらだらと登りを繰り返します。しかも、ここまでの花の咲き乱れる登山道から、地味ーな登山道に姿を変えます。実はこの道が、この日一番辛かった。

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高度表で見ると、末尾のネズミのしっぽみたいな部分なのですが。

とうとう、「もう駄目。もうヤダ。もう登りたくない」と弱音を吐いてしまった。そうすると止まらなくなってしまい、おっさん相手にぼやきまくりながら登る。

見るからにへばった様子の私を見かねてか、前を歩いていたおじさんがキャンディをくれて、「もうちょっとだから、がんばって」と励ましてくれた。こんな大人ですみません・・・。素敵な人に出会えるのも、山の良いところですね・・・。

もう泣くかもしれん、と思っていたところに、登山道を横断するように小川が流れていた。へたり込むように休憩。どうせ汗まみれなんだしと思い、流れる水を手ですくって頭を濡らしたら、すこし気分が良くなった。これで最後のひとふんばりができたような気がする。気を取り直して歩きはじめる。

おっさんが励ますつもりか、「そこが朝日小屋だと思う」と指さしたのは、朝日岳への分岐点であった。朝日小屋はそこからさらに一登り。「うそつき~」とおっさんを責めながらも、もう小屋の姿が坂の上に見えるので、気分は大分楽になった。ゆっくりゆっくり、最後の傾斜を登って小屋に到着。小屋前のベンチに座り込んでしばらく動けなかった。

この日は多くの団体さんが宿泊し、小屋は満員だったようです。足の踏み場もないほど敷き詰められた大部屋の布団 1 組を確保。

まずはサポートタイツを脱ぐために更衣室へ。更衣室、といっても人が 2 人も入ればいっぱいになりそうな狭い空間なので、時間帯によっては待ち行列ができそう。手早く利用するのがコツです。タイツを脱いで、身体を簡単にデオドラント・シートで拭いてようやくさっぱりした。

おっさんはビール、私はポカリを買って小屋前のベンチでゆっくりたそがれる。テント場の向こうに伸びている道を登ると、お花畑があるんだ、とおっさんが教えてくれるけれど、動く気にはなれない。入れ替わり立ち替わり、向かいのベンチに座る登山者の方々の山の話をうかがう。みなさん、すごい経験者ばかりだ。可愛い女の子 2 人連れが、白馬の地図を見ながら「猫の踊り場」という場所があるんだ、と話していたので思わず身を乗り出してしまった。めったに人の入らない山の中で、夜な夜な猫が踊っていると想像すると楽しい。

そうこしている間に夕食。P8060632 朝日小屋の夕食は、おいしいんだとおっさんに聞かされていたけれど、ほんとうに趣向が凝らしてあって、山の上で供されるごはんとは思えない。がつがつ食べる。

夕食後、階段をぎくしゃく降りる私の姿を見たおじさんに「ストレッチしなさい」とアドバイスをいただいたので、布団の上で柔軟をしていたら、そばの布団にいたおじさんが正しいストレッチのしかたを講習してくれた。それを発端に、部屋中のあちらこちらでストレッチがはじまって、なにか連帯感。

洗面所が混んでいたので、外に出て、キャンプサイトの水場で塩を使って歯磨きをしていたら、にわか雨が降って来た。最終日の登山道はぬかるむとべちゃべちゃになるらしいと聞き、ちょっぴり不安になる。

部屋のあちらこちらからいびきが聞こえてくるので、耳栓をして就寝。大勢の人と布団を並べ、妙に空気がこもって暑苦しく、落ち着かないはずなのに、神経質な私が爆睡してしまった。それだけ疲れていたのだと思う。夜中おっさんが星を見に外へ出たらしいけれども、そんな余裕、私にはまったくなかった。

次が最終日。朝日岳を経て蓮華温泉へ。

2010年8月12日木曜日

白馬縦走に挑戦す

家族旅行から帰ってきた 7 月 31 日に、おっさんが「夏休みとれたから、今度の水曜の夜から白馬に縦走に行くか?」と聞いてきた。私はあまり深く考えずに「うん」と返事していた。それからわずか 4 日後の 8 月 4 日夜、私たちは白馬を目指す夜行列車に乗り込んでいた。

こういう場合、考える時間があればあるほど山登りにまつわる煩わしいことが思い浮かんで「やっぱりやめとく」ということになりがちなのだけれども、勢いで「うん」と応えてからまるでジェットコースターに乗ったかのように急速に物事が進んでいってしまったのであんまり余計なことを考えたり心配したりする余裕がなかった。結果的には、こういうめったにできないチャレンジができて良かったのかな・・・。

8 月 4 日

夜 23 時 新宿発白馬行きのムーンライト信州で出発

夜行列車はしんどい。一晩中走り続ける電車の中で、固い電車の座席に座ったまま、結局眠れない。山旅に出かける場合便利なのでうちのおっさんなんか大好きみたいだけれども、私は神経質なのでやっぱり好きになれません・・・。

8 月 5 日

白馬駅に到着。栂池自然園を目指します。

リュックとハシモトは 2 年前におっさんと一緒に同じコースを縦走しているんだよね。IMG_1388

ロープウェーのガイドさんによると、この日はひさしぶりに視界が良好で遠くの山まで見えたという。

しかーし、かんかん照りの夏山の日差しは噛みつくよう。水をがぶ飲み。汗だくだく。途中水場があり、冷水をサーモスのボトルに補給できたのはありがたかった。サーモスは最近購入したのだけれど、前夜に家で詰めた氷が半日以上溶けずにボトル内に残っており、炎天下でとりわけ冷たい水を飲むことができてとても良かったです。

IMG_1392 すばらしい雲海

IMG_1396 ツマトリソウ

IMG_1397 ミヤマリンドウ

IMG_1398 チングルマ

IMG_1400 コイワカガミ とおなじみのラインナップ。

さすが白馬は花の山として名高いだけあり、自分のつたない知識にある限りの花がすべて見られたような気がする。

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IMG_1404 天狗原は湿原。この辺りまでは、小学生のちびっこたちが元気に駆け回っていた。

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IMG_1408 白馬乗鞍山頂。ガレガレの岩場が続きます。

そんな岩場の隙間に、IMG_1411

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森のアイドル、オコジョです。こんなにはっきり見たのは初めて。IMG_1414 足元をちょこまかと走り回っているのに気付き、大慌てでカメラを向けて、偶然にもベストショットを撮影できました。ついてるわ~。近くを歩いていたお嬢さんに写真を見せると、「テラカワユス」とほめてくださった(しょこたん???)。

IMG_1417 白馬大池にて昼食休憩。

しかしここからが本番と言えるでしょう。

IMG_1418お花畑にはハクサンコザクラの姿が目立ちはじめた。

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さらには、高山植物の女王ことコマクサ。 IMG_1422

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IMG_1426 気持ちの良い尾根道をゆっくりゆっくり進みます。

IMG_1429 雲を眼下に見下ろす。

IMG_1433 花のじゅうたん

IMG_1435 タカネナデシコ

IMG_1436 ミヤマアズマギク

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IMG_1439 ハクサンフウロ

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花や景色を堪能しつつ呑気に歩いていると、常駐救助隊の男性に声を掛けられた。私たちはなんと、白馬山荘を目指す登山者の最後尾にいるらしい。自分ってそんなに遅いんだ!とショックを受けてしまう。やっぱり日ごろの運動不足がたたっているのかな。

夏山は午後から天候が変わりやすく、雷の恐れもあるのでもう少し早くから登り始めないと駄目ですよ、とアドバイスいただいた。彼は山頂まで、私たちをサポートしてくださり、高山病対策として水や食事をしっかりとることや、小屋ではすぐに睡眠しないで 2 時間ぐらい起きておくこと、呼吸が苦しいときにゆっくり小股で確実に登ってゆく方法なども教えてくれた。

白馬山頂までは 5 つのだましピークがある。(ついに頂上!と思うとその先が現れることの繰り返し。)それを 1 つ 1 つ、かたつむりのような足取りで越えてゆく。呼吸が重く足が思うように動かない。やはり 3000 メートル級(正確には 2932 m ですが・・・) の山はちがうなー。

IMG_1445 辛いけれども素晴らしい見晴らし。

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山頂で常駐警備隊員さんと別れ、そこから白馬山荘までは下り道。やっとたどりついた山荘では、やっぱり最後のお客さんになってしまった。本格登山に挑む人たちはみんなそれなりに身体を鍛えているものなのだな。軽い気持ちでやって来たことをすこし反省。翌日からのルートもかなりの長時間、アップダウンの険しい道が続くという。山荘のスタッフの方にも懸念を示されてしまう。しかしおっさんも、私がこれほどまで歩けないとは思っていなかったんだろうなー。

この反省を基に、翌日は予定より 1 時間早く起きて出発することにした。

IMG_1450 白馬山荘の夕食はトンカツ。食事の最中、窓ガラスを夕陽が赤く染め始める。

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IMG_1460雲に浮かぶ剱岳

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IMG_1466 雲に捲かれたり晴れたりを繰り返す。間近に黒々とした雄姿を見せているのは旭岳らしい。

こういう非日常的にダイナミックな景色が見られると、辛くてもここまでやって来てよかったと思う。

白馬山荘には素敵なカフェ「スカイ・ラウンジ」があるのです。

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山頂でこんな洒落たケーキが食べられるなんて感激!

おっさんが個室を予約してくれていたので、部屋でゆっくり就寝する。

翌日は雲倉岳経由で朝日小屋を目指します。