おっさんが「品田屋のコロッケ」をおみやげに買って帰ってくれた。
品田屋は、駅からの帰り道途中にある、昔ながらの小さなお肉やさんだ。
歩道に面した小さいショウケースに並ぶきつね色の手作りコロッケは人気で、遅い時間に行くと買えないこともしばしば。
良いお肉と良い油を使っている以外は特別なことはなにもしていない(と思う)。でも素朴でどこか懐かしい味。ときどき無性に食べたくなる。
「今日が最後なんだ」
言葉足らずのおっさんが言う。
「え、どういうこと?今日最後のコロッケってこと?」
「おばちゃん入院するから明日からお店閉めるんだって」
品田屋は、以前はおじさんとおばさんが 2 人でやっていた。いつの間にか、おじさんの姿を見なくなっていた。
ここのところずっと、おばさん 1 人で切り盛りしていたけれど・・・。
袋の中を覗いてみると、きつね色の塊が詰まっていた。揚げポテトはおまけだという。
おばちゃん、ありがとう。
早く良くなって、できればまたお店を開けてほしい。
まってるよ。
万感の思いで最後のコロッケをいただこうと箸で挟んだら、なにか感触がちがう。
「あ、これはコロッケじゃないね」
チーズをチキンで巻いて揚げたチキン・ロールでした。
最後のコロッケ → 最後のチキン・ロール
やっぱり品田屋のチキン・ロールはおいしいね。
でも、コロッケ売り切れだったの?